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数学が苦手でもわかる!AIを理解するための「データのカタチ」入門:確率分布とは

Tags: 統計, 確率, 確率分布, データ分析, AI, 入門

AIは、私たちの想像以上に「データ」を頼りに賢くなっていきます。しかし、AIがデータをどう見ているのか、その背後にある考え方を知ることは、AIをビジネスで活用する上で非常に重要です。

このサイトでは、AIに必要な数学、特に統計の基礎を、数式を極力使わずに解説しています。今回は、AIがデータを理解するための重要な鍵となる概念「確率分布」について、やさしく紐解いていきましょう。

AIと「データのカタチ」の関係

あなたはExcelやBIツールを使って、売上データや顧客データを分析した経験があるかもしれません。その際、「一番多い価格帯はどれか」「特定の顧客層の購買頻度はどうか」といった視点でデータを見たことがあるでしょう。

AIも似たようなことをします。しかし、AIはもっと体系的に、データの「全体的なカタチ」を捉えようとします。この「データの全体的なカタチ」を示すのが「確率分布」という考え方です。

例えるなら、クラス全員の身長を調べたときに、多くの人が平均身長の近くに集まり、非常に背が高い人や低い人は少ない、といった傾向がありますよね。これがデータの「カタチ」であり、統計学ではこれを「分布」と呼びます。そして、その「カタチ」がどのような確率で現れるかを示すのが「確率分布」です。

確率分布とは何か? なぜAIに重要なのか?

確率分布を理解するためには、まず「確率」を少しだけ思い出してみましょう。サイコロを振ったときに、1の目が出る確率は6分の1ですよね。これは、起きうる全ての結果(1, 2, 3, 4, 5, 6)の中で、特定の出来事(1が出る)が起きる可能性を示しています。

確率分布は、これをもう少し広げて、「様々な結果が、それぞれどのくらいの確率で起きるか」を一覧にしたもの、とイメージしてください。

例えば、ある商品の顧客単価のデータを集めたとします。多くの顧客は5000円〜10000円の範囲で購入し、100円の購入は少なく、10万円を超える高額購入も少ない、といった傾向が見られるかもしれません。この「多くの顧客がどの価格帯で、どれくらいの割合(確率)で購入するか」というパターン全体が、顧客単価の確率分布です。

AI、特にデータを学習して予測や分類を行う機械学習モデルは、この確率分布を理解しようとします。なぜなら、データの背後にある「カタチ」や「パターン」を掴むことが、未知のデータに対して正確な予測や判断を行うための基礎となるからです。

このようなAIの判断は、データがどのような確率で、どのように分布しているかを理解することに基づいています。

ビジネスにおける確率分布のイメージ

ビジネスの場面でも、確率分布の考え方は様々なところで役に立ちます。

これらの例のように、現実世界の様々なデータには、それぞれ固有の「カタチ」、すなわち確率分布があります。AIは、大量のデータからこれらの分布を推定し、そのパターンを利用して未来を予測したり、最適な判断を下したりするのです。

代表的な「データのカタチ」:正規分布

確率分布には様々な種類がありますが、統計学で最もよく登場するものの1つに「正規分布(せいきぶんぷ)」というものがあります。

正規分布は、グラフにすると左右対称の美しい「ベル型」の曲線を描きます。多くの人の身長や体重、テストの点数、自然界の様々な測定値などが、この正規分布に近い形になることが知られています。

正規分布がなぜ重要かというと、統計学の多くの手法が正規分布を仮定していたり、現実世界の様々な現象を説明するのに役立ったりするからです。AIにおいても、データを正規分布に近づけることで学習効率が上がったり、正規分布を前提としたモデルが使われたりすることがあります。

もちろん、データの分布は正規分布だけではありません。ビジネスデータには、特定の項目にデータが集中するような偏った分布や、二つの山を持つ分布など、様々な「カタチ」があります。AIは、これらの多様な分布をデータから読み取り、それに応じた処理を行います。

まとめ

今回は、AIがデータを理解する上で重要な「確率分布」という概念をご紹介しました。

難しい数式を追いかけるのではなく、「データにはそれぞれ固有のカタチ(分布)があり、AIはそのカタチを理解して賢くなるのだな」というイメージを持っていただければ幸いです。この「データのカタチ」を捉える視点は、AIだけでなく、様々なデータ分析の場面で役立つでしょう。